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新着情報

■□■クライアント探訪■□■第343社

正晃株式会社

《存続・発展・承継》その答えは全て,ここにある

【お客様】  正晃株式会社 代表取締役 印 正哉 様
【聞き手】  株式会社システムコンストラクション 代表取締役 清野秀道

当コラムには、読者の皆様方から望外の反響を頂き、筆者として汗顔の至りです。従前通り、小社クライアントの中から特に興味深い企業団体にフォーカスを当て、代表者に直接ご登場頂きますので、引き続きご愛読頂ければ幸甚です。
あなたは、経営者のみならずその従業員も二代目が入社している企業をご存知ですか?
承継当時100億円の事業規模を、約4倍にも上伸させた経営者をご存知ですか?
今回は、学術研究や医療・科学の現場を支える総合試薬ディーラーとして業界一位の売上げを誇る正晃株式会社本社(福岡県福岡市東区松島三丁目34番33号)をお訪ねし、代表取締役印正哉様にお話を伺いました。引き続き、業界ナンバーワン企業のトップ対談となります。正晃鰍ニいえば、云わずと知れた、試薬をはじめ理化学機器、診断薬、検査機器や検査システム、工業薬品などを供給する総合試薬ディーラーとして、学術研究や医療・科学の現場に寄り添う総合商社です。新聞等のメディアで取りざたされている学術研究のバックグラウンドには正晃ありと言われ、我が国の医療・科学発展の一翼を担っています。そのブランドイメージや社会的ステータスは最早揺ぎ無いものであるにもかかわらず、いまだ貪欲にベンチャー的進取の気勢を忘れない印社長に、承継と盛業のヒミツをお伺いしてきました。経営実務に即実践できる珠玉のストラテジーの数々や興味深いエピソードは,正に必読です。

正晃株式会社にて

変わらぬために、変わる

印 正哉 様頑なに家訓を守り続けて、変化に歩幅を合わせる事を怠り挑戦を忌避した結果、また一つの企業が市場を去ることになった。くいだおれ人形で話題になった鰍ュいだおれである。心斎橋を訪れる客は時と共に変化し、それに対し組織としては家訓を守るのみで、変わり続ける市況や顧客ニーズに無関心を決め込み、革新的な改善立案を怠った帰結として閉店の憂き目を見る事になった。支店を出さない。家族経営を守り続ける。それ自体は立派な姿勢であったし、うまく機能していたが、これまでの成功がこれからの保証にはならないという一例である。"変わらないために、変える"企業の、存続発展承継のキーワードである。

事業承継の理想形

1950年(昭和25年)福岡市箱崎昭和町に、正晃化学薬品商会として創業した正晃鰍ヘ今期売上げ360億程度を見込み、創業来の増収記録を更新し続け、右肩上がりの成長基調が止まらない。資金繰りに多忙を極め、現在のポジションと事業規模を守る戦いに専心することを余儀なくされる企業が多い中、一際異彩を放つ業況にある。正晃を率いる印社長は、自社のことを語るときに時折、『正晃さんは…』と、敬称を付ける。無意識に、企業を客観的に人格化し、可視化している。これは筆者の経験上、非同族企業承継者固有の特徴である。どこの企業でも直面する承継問題について『ポジションは譲ってもらっても権限委譲が無く、微に入り細に入り、押されたくないツボを押され続ける院政を敷かれ、握り込まれるような名ばかりの承継に、企業の存続発展はありえない』『譲られた方は、どうなるかではなくどうするかを念頭に、失敗を恐れず、悩むより考えるより先ずはエネルギッシュに行動すべき』(印社長) 成功者の実体験として説得力のあるコメントである。

継承への警鐘

『新卒後、いきなり入社でしかも取締役?それは、会社も社会も許さない。若いときは時間をムダに浪費しがち。そこで先ずは他人の飯を食わせる。そう、デッチ奉公。そして、入社時は取締られ役平社員。その後、結果を出し続けて徐々に職性を勝ち取り、社内世論の醸成を獲得していくというプロセスが無ければ、組織は企業ではなしに家業に成り下がる』(印社長) これは、社長自身の経験則から、前のめりに子息への継承を諮る姿勢に対する一つの警鐘として捉えたい。社員自体に納得出来る要素が無ければ、代表者になっても誰も付いてこない孤独と孤立を味わう事が予見される。

回顧録1 下積み時代

印 正哉 様学卒後、取引先のメーカー系企業に就職。来る日も来る日も営業の日々。目標に追われ一ヶ月に一足ずつ靴を減らした。赤の他人から頭ごなしに怒鳴られ、精神的ショックで鍛えられた。これが彼のバイタリティーの源泉である。正晃へは、何の肩書きも無く入った。しかも、営業で苦戦しているエリアで、特に取引が脆弱なユーザーを担当した。連日客先へ通い、多くのコミュニケーションを持った。「調べておいてくれ!」の言葉が嬉しかった。客から意図的に、課題や宿題を引き出していたからである。これは次回会うための足がかりになるものだ。最初は口も聞いてくれなかったのが、担当が替わりますと云った途端に、お前が担当だから付き合っていたんだと。そのコトバが無性に嬉しかった。極めて地味で儲からない試薬の営業。一本数百円の硫酸の受注に何度も通い、何度も頭を下げた。一円玉の重さを身にしみて感じた日々であった。

回顧録2 企業内起業

創業者の子息だからエスカレーター式に昇格では、その根拠として余りに薄弱で、社内世論が許さず、強引に推し進めれば従業員との間に活断層を生じかねない。事業承継のプロセスとして、先ずは内部から認められるか否かが問題である。そこで彼は、未開拓の新たなプロジェクトに取り組んだ。いわば、【企業内起業】である。試薬は既に社内にパイオニアが沢山いる。彼がフォーカスを当てたのは、理化学用や医療用の機械販売。例えば、一度に多くの血液検査が可能なオートアナライザー(自動分析器)。一台で億単位の売上げとなり、納品後は試薬の販売促進にもつながる。これをやれば、社内評価に繋がると目論み、機材部リーダーとして新規事業部を立ち上げた。部下は新入社員を含む5名。ところが客先では、「お前は薬屋。試薬だけやっとけ!」屈辱と焦燥感が支配する人格崩壊の危機に瀕した。

回顧録3 夢しか実現しない

ここで彼は、与えられたことを単に消化する、作業をシゴトと取り違えていたことや、挫折経験の無い人間は、低い目標に安住していることに気付く。『人生は、辛い時が上り坂、楽になったら下り坂』(印社長)断り文句は単なる挨拶なんだと自分を鼓舞し、早速リバイバルに取り組む。先ずは商品を知り抜き、分解して組み立てられるまでにスキルアップ。スタッフは、文系上がり。売り子からの脱却とカウンセリング営業手法確立のため連日メーカーへ通った。一年が経過したある日、再度、デモとプレゼンに行った。やるね♪の言葉と共に、成約に至った。思わず熱いものが込み上げた。立ち上げ当初1億程度の売上げから、今ではそれが100億規模となり、主力事業の一つへと成長した。さながらプロジェクトXの様相を呈した時期であった。新規事業の立ち上げと成功は自信につながり、社内でも評価を得た。機械を売ることで、試薬も後から付いてきた。結果、試薬を売るから、試薬も売るへと、事業に幅と奥行きを持たせることに成功した。その後、福岡営業所所長、営業部長、取締役、常務、専務を歴任し、いよいよ代表権者へ。

回顧録4 代表取締役就任へ

印 正哉 様当時について『苦労はしていない。しかし、数多くの経験はした。つまり、苦労を苦労とは思わなかった。』と振り返る印社長は、代表者として18年目。先代の父が創業者。社長業は絶えず発想していないと、アイデアがないとだめ。70にもなればそれは組織にとっては老害だといって、先代は静かに現場を去った。年商100億+従業員100名、第二創業期のスタートである。それが現在では、年商、従業員共に約4倍へ。これに慢心することなく、日々是決算の精神でアグレッシブに活動する印社長であるが、『60歳程度で、若い方にやらせたい。そのへんの見極めができる自分でありたい。』と、現在の立場に綿々とせず、最早手仕舞いの時期までも視野に置いているとは驚きである。

海外進出と現地貢献

本来マルチスライスCT以外では不可能とされていた心臓の立体的画像解析を、初めてエコーで可能とした新製品の開発に成功し、これを足掛かりに上海正晃商貿有限公司を立ち上げ、中国進出を果たした。すると、付随して臨床検査薬の大量受注も発生した。中国での事業拡大は、同国の平均寿命を延ばすことにも寄与しそうだ。ローカルからグローバルへ、活躍と貢献のフィールドは国内に留まらず、その歩幅も日増しに広く、早くなりつつある。

ナンバーワンの、その先へ

現在小社の支援にてCSRやISOに取り組む同社であるが、認証自体に興味はなく、組織の良いところを伸ばし、足りないところを補うマネジメントツールとしての利用を目的とする。経営手法の体系化を得て、従来の技術力・組織力と共に、正に鬼に金棒である。当然、訴訟社会を生き抜く企業保険効果の抽出にも軸足を置いている。『会社が生きるということは、どれだけ社会の中で活きれるかに掛かっている。いわば、企業の存在価値はその社会性で最大化される。つまり売上げは社会からの投票であり、それに伴う納税は社会への存在証明である。適正な納税と社会貢献無しには、市場からその存続を許されない』(印社長)多忙を極める中、社団法人博多法人会副会長、社団法人日本試薬協会理事、福岡商工会議所議員を務めるなど、地域奉仕や各種団体活動にも余念が無い。

正晃の特異性とひみつ

仮に経営者の息子に生まれ付いていないでも彼は経営者である。所謂世間一般での、二代目社長特有の違和感が抽出されず、寧ろ、一世一代の創業者的雰囲気に包まれる。経営者として従業者の潜在的ポテンシャルを顕在化させ、それ以上の力量を開発する彼の手腕は、他に類を見ないものである。そのヒミツを、『医療関連業としては、組織も健康である必要がある。組織の問題は全て、ひとの問題に帰着する。況や従業員を大切にしない組織が、お客様を大切に出来る訳が無い』(印社長) 同社では保養施設を複数保有し、社内クラブ活動も盛んである。決算賞与で利潤は確実に社員に還元する。何より経営者としてスタッフに対する感謝の気持ちを忘れない。同社を訪れると先ず驚くのが、社内を闊歩しているスタッフがいないことだ。皆小走りで移動する。電話の声も、1オクターブ程高い。気持ちが良い。いつも明るく前向きである。誠・正・精 つまり、誠を貫き、正しいことを精力的に。この社是信条が一人一人に溶かし込まれている。『例えば二本の糸がしっかりと結ばれるためには、二本の糸は、お互いにもつれあい、引っ張りあわないと、両糸は結ばれない。両糸がまっすぐのままではすぐに解けてしまう。経営者と従業員はこれと同じ。文字通り"結束"のためには、お互いもつれあう努力が必要。自分を知る。相手を知る。相手に自分を刷り込む。相手を理解しようとする。つまり、コミュニケーションが大切』(印社長)同社へのトランスファーを志向する中途入社希望者が後を絶たないのも頷ける。

〜インタビュー所感〜

どこかで聞きかじったような言葉遊び的経営理念を自説として唄い、結果、話しが文字化けしている経営者が多い中、今回の印社長は根拠のある自信に裏書された極めて明快な経営理念を持ち合わせ、これを具現化している。神輿に乗る方を決め込む社長、これは決して経営者ではない。従業員を大切にしない、いわば労働力の搾取に明日は無い。組織の組み立てに於いて、先ずはやってみて、云って聞かせて褒めてみて、社員と温度差無く共に苦楽を分かち合うことが経営者として最も大切な事である一方で、従業員側でも、組織に何を残せるかを考える積極型人間以外は生き残れず、会社から何を引き出せるかを考える会社依存型人間では、当然の事ながら、履歴書を沢山書いて外回りすることを余儀なくされるのが自然である。これだけ信頼されればスタッフも気持ち良く仕事ができると感ずる同社であるが、ひとたび冷凍が溶融すれば、一ミリグラム100万円がだめになる恐れがあるデリケートな商品を扱う仕事は、何よりヒトとヒトとのコミュニケーションが大切である。顧客満足度以前に、労務満足度の高いヒューマンカンパニー、つまり、ひとの息遣いが聞こえる、ぬくもり溢れる人肌企業。これが、成長企業正晃の真実である。




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